不正競争防止法(3)
2014.01.29 10:00
<「商品の形態」の商品等表示性 >
1.不正競争防止法には、「商品等表示」が例示列挙されていますが、「商品の形態」は明示されておりません。 また、「商品の形態」は、通常、機能を発揮させ又は美観を高めるなどの目的で選択されるものであり、商品の出所表示を目的とするものではありません。 そこで、「商品の形態」自体が、不正競争防止法第2条第1項第1号の「商品等表示」に該当するか否かの問題が生じます。
2.「商品の形態」の商品等表示性は、判例上、以下のように扱われています。 1) 「商品の形態」が、例えば、「商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し、かつ、商品の形態が、長期間継続的かつ独占的に使用されるか、又は、短期間であっても商品の形態について強力な宣伝広告等により大量に販売されて使用されたような場合には、商品等表示性が肯定されています。 ・懐中電灯『マグライト』事件 (大阪地裁平成14年12月19日判決 平成13年(ワ)第10905号)
2) ただし、「商品の形態」が、「商品の製造過程及び機能的効果に必然的に結びついた形態であり、その商品の種類を示す特徴といえることができる」場合であり、この商品を「不正競争防止法第1条第1項第1号の規定で保護する」ことにより、この商品を「製造販売等する第三者の営業行為のすべてを禁圧することにつながり、同法条が本来的な商品表示として定める『他人の氏名、商号、商標、商品の容器・包装』のように、商品そのものでない別の媒体に出所表示機能を委ねる場合とは異なり、同法条が目的とする出所の混同を排除することを超えて、商品そのものの独占的、排他的支配を招来し、自由競争のもたらす公衆の利益を阻害するおそれが大きい」場合には、公正な競争維持の観点から、商品等表示性が否定されています。 ・泥砂防止用マット(コイル状マット)事件 (東京高裁平成6年3月23日判決 平成3年(ネ)第4363号) また、商品等表示性が否定された異なる例としては、競争に不可欠な商品形態、即ち、同種の商品に共通してその特有の機能及び効用を発揮するために不可避的に採用せざるを得ない形態の保護を除外する考え方があります。 ・ルーブキュービック事件 (東京高裁平成13年12月19日判決 平成12年(ネ)第6042号)
3) また、いったん獲得された商品の出所表示性であっても、その後長年の間類似形態の商品が市場に出回ることによって消滅する場合がある、とされています。 ・ギブソンエレクトリックギター事件 (東京高裁平成12年2月24日判決 平成10年(ネ)第2942号)
不正競争防止法(2)
2014.01.22 10:00
<不正競争防止法における「商品等表示」>
不正競争防止法には、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器、商品の包装」が、「商品等表示」として条文に例示列挙されていますが、過去の判決においては、「タイプフェイス」、「マンション名」、「ウエットスーツの三色ライン」、「幼児用玩具の形態」等についても「商品等表示」と認められています。
1.タイプフェイス
「無体物であっても、その経済的価値が社会的に承認され、独立して取引の対象とされている場合には、「商品」に該当しないとするのは相当でない。」
東京高裁平成5年12月24日 平成5年(ラ)第594号)
2.マンション名
「マンションは、商取引の目的となって市場における流通が予定され、それ自体に表示を使用してその出所が識別される性質を備えている物として、不正競争防止法第2条第1項第1号にいう「商品」に該当する物とされる。」
東京地裁平成16年7月2日 平成15年(ワ)第2743号)
3.ウエットスーツの三色ライン
「…このように商品と特定の色彩・配色との組み合わせも又、商品の形態と同様、不正競争防止法一条一項一号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」たり得るものとはいわなければならない。」
大阪地裁昭和58年12月23日 昭和56年(ワ)第7770号)
4.「商品表示等表示性」についての主な事件の一覧
・「仮面ライダー」・「仮面ライダーV3」の姿をした人形の形態
「商品等表示」と認められなかった (昭和49年(ワ)第2092号)
・幼児用玩具の形態
「商品等表示」と認められた (平成6年(ワ)第24055号)
・システム什器の形態
「商品等表示」と認められなかった (平成12年(ワ)第12675号)
・家電の色
「商品等表示」と認められなかった (平成6年(ネ)第1518号)
・色番号
「商品等表示」と認められなかった (平成15年(ワ)第825号)
・映画の題名
「商品等表示」と認められなかった (平成17年(ネ)第10013号)
不正競争防止法(1)
2014.01.15 10:00
<不正競争防止法の概略>
1.不正競争防止法の目的 不正競争防止法第1条には、「この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定されており、「事業者の営業上の利益」と、「公平な競争秩序」の双方を保護することを目的としています。
2.不正競争行為 不正競争防止法第2条第1項各号には、以下の行為が不正競争行為に該当するとして限定列挙されています。
・混同惹起行為(第1号) ・著名表示冒用行為(第2号) ・商品形態模倣行為(第3号) ・営業秘密に係る不正行為(第4~9号) ・技術的制限手段に対する不正行為(第10、11号) ・ドメイン名不正取得行為(第12号) ・品質誤認惹起行為(第13号) ・信用毀損行為(第14号) ・代理人等商標冒用行為(第15号)
他人の行為が上記各号に該当する場合でも、一定の要件を満たす場合は適用除外が認められます(第19号各号)。 ただし、ドメイン名不正取得行為(第12号)及び信用毀損行為(第14号)については適用除外がありません。
3.救済措置 1) 民事上の救済 他人の不正競争行為により営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は、その他人に対して差止請求が認められます(第3条)。 他人の不正競争行為により実際に損害が発生している場合は、損害賠償請求も認められます(第4条)。 2) 刑事上の救済 不正競争行為を行った者に対しては刑事罰が科せられる場合があります(第21条)。 ただし、ドメイン名不正取得行為(第12号)、信用毀損行為(第14号)及び代理人等商標冒用行為(第15号)は刑事罰の対象とはなっていません。
特許出願の早期審査制度(1)
2014.01.08 10:00
特許出願の早期審査制度は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う制度です。
特許出願については、出願審査請求制度が採用されており、出願審査の請求を行った順に特許出願の審査が行われます。技術分野によって異なりますが、ほとんどの特許出願は、出願審査請求後、特許庁から最初のアクション(拒絶理由通知や特許査定)があるまでに1年以上を要しています。
これに対して、早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均約1.9か月となっており(2012年実績)、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。早期審査の請求は、全ての特許出願に対して認められるわけではなく、以下に示す特許出願に限定されています。
(1) 実施関連出願
出願人自身又は出願人からその出願に係る発明について実施許諾を受けた者が、その発明を実施している特許出願
(2) 外国関連出願
出願人がその発明について、日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している特許出願(国際出願を含む)
(3) 中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
出願人の全部又は一部が、中小企業又は個人、大学・短期大学、公的研究機関、又は承認若しくは認定を受けた技術移転機関(承認TLO又は認定TLO)である特出願
(4) グリーン関連出願
グリーン発明(省エネ、CO2 削減等の効果を有する発明)について特許を受けようとする特許出願
(5) 震災復興支援関連出願
出願人の全部又は一部が、災害救助法の適用される地域に住所又は居所を有する者であって、地震に起因した被害を受けた者である特許出願、又は、出願人が法人であり、当該法人の特定被災地域にある事業所等が地震に起因した被害を受けた場合であって、当該事業所等の事業としてなされた発明又は実施される発明である特許出願
(6) アジア拠点化推進法関連出願
出願人の全部又は一部が、特定多国籍企業による研究開発事業の促進に関する特別措置法(アジア拠点化推進法)に基づき認定された研究開発事業計画に従って研究開発事業を行うために特定多国籍企業が設立した国内関係会社であって、該研究開発事業の成果に係る発明(認定研究開発事業計画における研究開発事業の実施期間の終了日から起算して2年以内に出願されたものに限る。)に関する特許出願PCT国際出願(3)
2013.12.25 10:00
今回は、国際調査・補充国際調査について説明いたします。
1.国際調査
受理官庁(日本特許庁)に対してPCT国際出願を行うと、自動的に国際調査機関(日本特許庁)が国際調査を行い、出願人に国際調査報告が送付されます。国際調査の目的は、国際出願の請求の範囲に記載された発明に「関連のある先行技術」を発見することであり、国際調査報告には、
・関連があると認められた先行技術または関連技術が記載された文献のリスト
・発明の分類(国際特許分類)
・調査を行った技術分野
・発明の単一性の欠如に関する情報
等が記載されています。また、国際調査機関は、併せて、国際出願の請求の範囲に記載された発明が特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)を有するものと認められる否かの審査官の見解を示した国際調査見解書を作成し、出願人に送付します。
国際調査見解書に示された特許性についての見解は、予備的かつ非拘束なものであり、最終的な特許性の判断は、各指定官庁に委ねられていますが、特許庁の審査官の見解であることから、出願人にとっては、国内移行をするか否かの判断のための有用な情報となります。
2.補充国際調査
国際調査に加えて、出願人の任意の請求により、別の国際調査機関による国際調査を提供する補充国際調査が、2009年1月から開始されました。補充国際調査の目的は、複数の国際調査機関に調査を依頼することによって、国際段階で先行技術を極力把握し、国内段階で新たな先行技術文献が発見される可能性を減少させることです。
補充国際調査は、出願時における国際出願に基づいて、発明の単一性の要件を満たす一の発明のみについて行われます。
補充国際調査の請求は、出願人が優先日から19ヶ月までにWIPO国際事務局に対して行う必要があります。
補充国際調査は、遅くとも優先日から22箇月の期間が満了する時までに開始され、優先日から28箇月以内に補充国際調査報告書が作成されます。なお、2012年8月時点の補充国際調査機関は、以下の通りです。
・オーストリア特許庁
・欧州特許庁
・フィンランド特許庁
・連邦知的財産特許商標行政局(ロシア特許庁)
・スウェーデン特許登録庁
・北欧特許庁PCT国際出願(2)
2013.12.18 10:00
今回は、PCT国際出願制度のメリットについて説明いたします。
1.自国の特許庁に出願書類を提出するだけで、世界各国へ出願したのと同じ効果が得られる。
各国の特許庁に個別に出願書類を提出することなく、各国における「出願日」を確保することができますので、PCT国際出願の重要なメリットのひとつです。2.優先日から30ヶ月以内に各指定国に国内移行すればよいので、ビジネスの進捗状況に応じて、本当に権利を取得したい国を決定することができると共に、翻訳作業に要する時間を確保することができるというメリットがあります。
また、特許性の判断や市場動向の分析等に多くの時間をかけることで、最終的に取得したい権利範囲を検討する時間的猶予を持つこともできます。3.PCT国際出願では、国際公開される前に国際調査報告及び国際調査見解書が提供されますので、出願人は特許性判断の指針とすることができるというメリットがあります(任意で特許性に関する国際予備報告も入手可能です。)。これにより、その後の手続を断念し、翻訳や国内移行手続に関する支出を抑えることも可能です。
4.PCT国際出願では、国際出願時に受理官庁へ1回の手続を行えばよく、パリルートを利用して各国ごとに直接出願を行う場合のように、各国ごとに優先権主張の手続を行う必要がないというメリットがあります。
5.PCT国際出願では、国際段階で請求の範囲の補正が認められており、1回の補正手続きを行うだけで、その効果が各指定国に及びますので、各指定国毎に補正手続きを行う必要がないというメリットもあります。
6.PCT国際出願を国内移行した際、幾つかの指定国では、国内手数料が減額の対象となる可能性があります。日本では、日本国特許庁が国際調査報告を作成したPCT国際出願が日本に国内移行した場合、当該出願にかかる審査請求手数料が約40%減額されます。
PCT国際出願(1)
2013.12.11 10:00
今回は、まず、PCT国際出願制度の概要について説明いたします。
1.PCT国際出願制度は、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、以下「PCT」という。)に基づく国際的な特許出願の制度であって、自国の言語で作成した出願書類を、自国の特許庁に提出することによって、その提出日(国際出願日)の時点で有効な全てのPCT加盟国に対して、国際出願日と同日に国内特許出願を提出したことと同様の効果が得られる制度です。
2.同一の発明について多数国で特許権を取得しようとすると、基本的には各国ごとにその国の公用語でその国の様式に従って特許出願を行う必要がありますが、全ての国に対して同日に、それぞれ異なった言語を用いて異なった出願書類を提出することは、とても煩雑な作業であり、事実上不可能であるといえます。
PCT国際出願制度は、このような手続きの煩雑さ、非効率さを改善するために設けられた国際的な特許出願制度です。3.PCT国際出願制度の特徴
1) PCT国際出願願書の方式審査は、PCT国際出願を受理した受理官庁が国際的に統一された基準で行います。
2) 全てのPCT国際出願について、その発明に関する先行技術があるか否かを国際調査機関が調査する「国際調査」を行い、その結果が「国際調査報告」として出願人に提供されます。
3) PCT国際出願は、出願人の希望により、特許性を判断する際の国際的な一定基準を発明が満たしているか否かの予備的な審査である「国際予備審査」を受けることができます。その結果は、「特許性に関する国際予備報告」として出願人に提供される。
4) PCT国際出願を指定国に国内移行させる場合、その期限は、優先日から通常30ヶ月まで認められます。
5) 全てのPCT国際出願(明細書、請求の範囲、図面)は、優先日から18ヶ月を経過したのちすみやかに国際公開されます。
6) PCT国際出願制度においては、出願人は、出願書類を一通だけ受理官庁に提出すればよく、出願人が受理官庁へ提出した願書に記載した事項を変更するための要請についても、WIPO国際事務局が記録の変更を行います。
その後、指定官庁が実体審査のために関係書類が必要となる場合であっても、出願人に代わってWIPO国際事務局が必要なコピーを作成し、関係する指定国からの要請に応じて送付します。
6) 特許の取得を希望する指定国については、優先日から通常30ヶ月の期限が満了する前までに、PCT国際出願をその指定国に国内移行する必要があり、具体的には、その指定国が認める言語に翻訳した翻訳文を指定官庁に提出することになります。「じぇじぇじぇ」商標出願 ロケ地・岩手の菓子店
2013.12.04 10:00
9月に放送が終了したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった岩手県久慈市の老舗菓子店が、ドラマがきっかけで流行した方言「じぇじぇじぇ」を特許庁に商標出願中だ。市外の業者に先に商標登録され、トラブルになるのを防ぐためで、独占する意図はないとしている。
出願したのは1930年創業の「沢菊」。同市小袖地区で驚きを表現する「じぇじぇじぇ」がドラマに登場したのを受け、5月初旬に方言を冠した焼き菓子を発売し、5月10日に菓子の分野で「じぇじぇじぇ」と「ジェジェジェ」を」商標出願した。同社の宮沢陽一社長は「他店にも自由に使ってもらい、久慈を盛り上げてほしい」と話している。
読売新聞 2013年11月14日 朝刊
ドラマで使われて広く認知されるようになった流行語を、直接、関係ない第三者が商標出願することに道義的な問題あると指摘する専門家もいるようです。
しかしながら、「じぇじぇじぇ」は東北地方で一般的に使用されている感嘆を表す言葉であり、それが特定の商品(菓子)について広く使用されていないのであれば、その言葉自体がNHKのドラマで有名になったからといって、菓子に使用する商標として一私人に独占させることは、特に問題がないものと考えます。私も、以前、NHKのドラマの舞台となった地域の活性化のために行っているプロジェクトの名称を、そのプロジェクト参加者である飲食店の経営者の方からの依頼により商標出願したことがありました。
その方も、「じぇじぇじぇ」の出願人と同様に、その名称を自社で独占する意図はなく、そのプロジェクトの名称を他の地域の人たちに使用されたくないという思いで、とりあえず代表して自社で権利化しようと考えておられました。商標出願の審査段階では、プロジェクトとの関係が認められない出願人が自己の商標として採択することは、プロジェクトの名称を使用した観光振興や地域おこしなどの公益的施策の遂行を阻害することになるとして、公序良俗違反として拒絶理由通知が出されましたが、審査官と協議した結果、プロジェクトの参加者全員の承諾が得られれば、公序良俗違反の拒絶理由は解消されるとのことでしたので、参加者の承諾を得る作業を行われたようですが、結局、参加者全員の承諾を得るまでに時間がかかりすぎるということで、権利化を断念されました。
特定の名称を使用して観光振興や地域おこしなどの公益的施策を行う場合は、その名称をどのようにして保護するかを地域全体で考えていく必要があると思います。
弁理士 西村陽一
2013年12月18日から施行されるされる米国特許重要プラクティス
2013.11.29 11:33
特許出願の方式を国際的に統一する特許法条約の批准と施行に伴い、米国特許プラクティスは以下のような重要な変更があり、原則として2013年12月18日以降の出願に適用される。
1.優先権期間の2ヶ月の延長
①外国出願に基づく優先権主張出願、②仮出願にもとづく優先権主張出願、そして③外国出願又はPCT出願に基づくPCT優先権主張出願は、12ヶ月(意匠特許出願は6ヶ月)の期限を越えても、遅れが非意図的であるなら2ヶ月以内であると優先権主張を回復できる。但し、非意図的放棄を回復させるための料金(1900ドル:2014年1月1日、以下同じ)が必要である。2.非意図的な放棄出願の回復
米国特許法の新しい第27条は、オフィスアクションへの対応なし、特許料金や年金の不払い等で放棄されたと見なされた出願は放棄が非意図的であった時のみ回復できると規定している。回復するための請願料金(1900ドル)が必要であり、小規模団体は半額である。
同時に不可抗力(unavoidable)による回復は廃止される見込みである。この規定は2013年12月18日以降の、全ての出願、及び特許に適用される。よってもし不可抗力という理由で回復が難航している従来法の出願ケースがあれば2013年12月18日から非意図的という理由で回復を行えば比較的簡単に回復できると考えられている。3.クレームと図面が無くても出願日は確保できる
明細書を出願すれば、出願日は与えられ、クレーム、図面、デクラレーション、料金は出願後に提出できる。但し、クレーム等がないとその通知が特許庁から出されるので、指定期間内に追徴金(140ドル)を支払って提出することになる。4.継続する出願
継続する出願を出願する時は出願データシートに①前出願の引用(reference)、②前出願の出願番号、③その出願日、そして④前出願の係わる国、組織を特定して出願すれば出願日は確保できる。
従来のように前出願のコピーを添付する必要はないが、やはり指定期間内に追徴金140ドルを支払って提出しなければならない。
万が一、出願番号等の記載ミスがあった場合はそれを訂正しないと出願日は与えられず、放棄したものとみなされる。
外国特許出願に基づく優先権主張出願の場合は出願から4ヶ月又は外国出願日から16ヶ月の遅い方の日内に証明書付きコピーを提出しなければならない。5.未提出書類(missing parts)の提出
クレームや未提出書類(例:デクラレーション等)がある場合は、「未提出書類あり」の通知が送られ、前述したように指定期間内に追徴金(140ドル)を支払って提出できる。米国特許商標庁は基本的提出期限を出願から8ヶ月に決定しており、それ以上遅れた場合は下記の特許期間調整の措置がある。6.特許期間の調整
出願要件が緩和されたので特許出願期間の調整のあり方も若干変わる。
米国特許商標庁は出願の様式が完全に整備されるべき期間として出願日から8ヶ月と設定し、それより遅れた場合は、遅れた期日だけ特許期間調整から削除される。
この規定は①2013年12月18日以降の出願と、②PCT出願でその日以降に行われた国内移行出願のみに適用される。出所 WHDA法律事務所「米国特許ニュース(2013年12月18日)」より
アップル、サムソンに対して290億円の損害賠償評決を得る
2013.11.29 11:20
アップル対サムソンのi Phone特許訴訟は2012年に陪審員は約1000億円の評決を下していたが、ルーシー・コー判事(韓国系アメリカ人)はその内600億円は実質的証拠があることから確定させ、残りの約400億円分は損害賠償の証人の計算根拠の証拠に誤りがあることから、その分の損害賠償の値のみを決定する公判をやり直すことを命じていた。
その公判はこの11月中旬から始まっていたが、米国特許庁はアップルの問題特許のクレームを再審査で拒絶したためサムソンは公判を延期するモーションを出していた。
しかしコー判事は特許有効・無効が最終的に確定するためにはまだ2年くらいかかる(再審査の最終審決→CAFC控訴とその判決)ので中断させることは認めないと決定した。
損害賠償額の公判は進み、その最終陳述で、アップルの訴訟弁護士は新しい陪審員に対し「韓国企業がアメリカの技術を盗んだ」というracist(人種差別)に近い発言をしたという理由で、サムソン弁護士はミストライアルであったというモーションを出したが、コー判事はそれを却下した。
そして陪審員は結局添付の評決に示されるように約2億9000万ドル(約290億円)という評決を下した。
コー判事はこの額が実質的証拠によって支持されているかを分析中で、問題がなければ確定する(証拠を作り直したのでまず問題は無い)。サムソンの訴訟弁護士は、評決後にアップルの最終陳述はやはり不当であったとの評決棄却モーションを出す予定といわれているが、恐らくコー判事は否定し、その場合、本評決の290億円、そして結局総額900億円は確定することになろう。
またこの裁判ではサムソン弁護士はアップルの社内秘密情報(弁護士のみ情報)をサムソン役員に開示したことが明らかになっており、これによってどの程度の制裁措置が課せられるのか注目を集めている。
これらが全て確定すると最終判決が出され(遅くとも2014年初め頃まで)、その後にサムソンはCAFC控訴して時間を稼ぎ、万が一、アップルの問題特許が無効になることが確定されればその分の損害賠償を差し引くモーションを出すのであろう。
以上のようにアップル対サムソン訴訟はまだ数年は続くのである。出所 WHDA法律事務所「米国特許ニュース(2013年12月18日)」より