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不正競争防止法(9)

2014.03.12 10:00

<不正競争防止法第2条第1項第3号の適用除外における「日本国内において最初販売された日から起算して3年」について>

 

・不正競争防止法 第19条第1項

第三条から第十五条まで、第二十一条(第二項第七号に係る部分を除く。)及び第二十二条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。

 第5号イ

日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 

1.保護期間の始期

 現行法では、保護期間を「日本国内において最初販売された日から起算して3年」と規定しており、保護の終期の起算点のみを記載し、保護期間の始期が明確に規定されていないことから「最初に販売された日」とはいつかが問題となります。

 この点については、未だ現に販売していない以上、「営業上の利益」の存在が明らかではないので、不正競争防止法による保護を一律に認めるのは困難であるとする一方で、個別の事案によっては、発売前であっても発売に向けて客観的に十分な準備を進めていたような場合には、営業上の利益の侵害が認められるとして訴訟上の保護を与えるのが妥当とする見解がありますが、「最初に販売された日」とは、商品の形態が確認できる状態での販売のための広告活動や営業活動を開始した日」(経済産業省知的財産制作室編集『逐条解説不正競争防止法』(平成21年改正版)(有斐閣、2010年)とする説が有力です。

  ・ハートカップ事件

 (神戸地裁 平成6年12月8日判決 平成6年(ヨ)第487号)

 (名古屋地裁 平成9年6月20日判決 平成7年(ワ)第1295号)

「最初に販売された日」とは、商品の形態が確認できる状態での販売のための広告活動や営業活動を開始した日であると判示(神戸地裁)

「最初に販売された日」とは、商品を初めて市場に出荷した時点と判示。本件では、サンプル出荷の日とされた。

 

2.改良品について「最初に販売された日」

 先行開発者が投下した費用、労力を回収することが3号の趣旨であることから、改良品は先行品に対して、新たな投下費用・労力が回収を要する程度でなければならないと解されています。従って、改良品と先行品を比較して両品の形態が実質的に同一である場合には、先行品が最初に販売された日をもって、「日本国内において最初に販売された」日であると解されています。

  ・建物空調ユニットシステム事件

 (東京高裁 平成12年2月17日判決 平成11年(ネ)第3424号)

「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」とは、保護を求める商品形態を具備した最初の商品を意味するのであって、このような商品形態を具備しつつ、若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないと判断された。

  ・自動排泄処理装置事件

 (東京地裁 平成23年2月25日判決 平成20年(ワ)第26698号)

改良品を先行品と対比したうえで、原告が、改良品の商品形態として、その模倣について不正競争防止法2条1項3号による保護を求め得るのは、改良品の形態のうち、先行品の形態と実質的に異なる部分に基礎を置くものでなければならないとすべきと判事。

 

3.発売前に模倣品が出回った場合の「最初に販売された日」

 平成17年報告書(産業構造審議会知的財産政策部会 不正競争防止法小委員会 「不正競争防止法の見直しの方向性について」)は、「現行規定では、保護の終期の起算点のみを記載するが、発売前の模倣品から保護されるか否かなど、保護期間の開始時期は明確には規定されていない。(中略)個別の事案によっては、発売前であっても、発売に向けて客観的に十分な準備を進めていたような場合には、営業上の利益の侵害がみとめられるとして訴訟上の保護を与えることは当然である」としています。

 なお、他人の模倣があったとしても、自ら商品化し、市場に流通しない場合は「他人の商品」とはいえないため、保護を求めることはできません。従って、請求できるのは発売後ですが、損害賠償は侵害行為時に遡って認められます。

  ・写真立て事件

 (大阪地裁 平成14年2月26日判決 平成11年(ワ)第12866号)

被告製品は、原告製品よりも先に販売されていたが、このような販売時期の先後は、イ号製品…が原告製品一の模倣であり、ロ号製品…が原告製品二の模倣であるという認定を妨げるものではないと解されるし、原告製品の販売開始前に販売された被告製品の販売数量も、不正競争防止法に基づく損害賠償の算定の基礎となし得るものと判示した。

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