書籍電子化 自炊代行業 禁止命じる 東京地裁 作家の複製権侵害
2013.10.04 13:33

書籍をスキャナーで読み取って電子化する「自炊」の代行業は著作権法に違反するとして、作家の浅田次郎さん(61)や漫画家の弘兼憲史さん(66)ら7人が東京都内の2業者を相手取った訴訟で、東京地裁は30日、2業者に事業の禁止と計140万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。大須賀滋裁判長は、業者による書籍の電子化は、著作権に含まれる、著作者の「複製権」を侵害するとの初判断を示した。
被告側は「顧客の指示で手伝っただけで、複製の主体は顧客だ」と主張したが、判決は、裁断やスキャンという主要な電子化作業を被告が担っていることから、「複製の主体は業者」と判断。被告が原告らの書籍の電子化は受け付けないとしていたのに、実際は注文に応じていたことも認定し、「今後も侵害の恐れがある」として事業禁止を命じた。
読売新聞 2013年10月1日 朝刊
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(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二 省略
三 省略
2 省略
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本判決は、「複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない」という理由で、書籍を保有する利用者による複製に該当しないと認定したものである。
しかしながら、自炊業者は、利用者の手足として複製していると考えることができるので、書籍の保有者が複製作業に関与しているか否かによって、その判断を行うことには疑問が残る。この点について、本判決は、「このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。」と認定しているが、どうもすんなりと納得することはできない。
弁理士 西村陽一

