コンピュータ・ソフトウエアの保護(4)
2014.04.23 10:00
<コンピュータ・ソフトウエア関連発明の保護>
請求項に係る発明が特許法上の「発明」であるためには、「その発明は自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものである」ことが必要であり、特許法上の発明でない場合は、特許法第29条第1項柱書き違反として拒絶されます。
しかしながら、コンピュータ・ソフトウエア関連発明は、数学的なアルゴリズムやビジネスを行うための方法など、それ自体が自然法則を利用しない特徴に寄ってたつことが多いため、特許法上の「発明」であるか否かが問題となることがしばしばあります。
このため、コンピュータ・ソフトウエア関連発明については、特定技術分野の審査基準が設けられており、その審査基準において、「『ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている』場合は、ンピュータ・ソフトウエア関連発明が『自然法則を利用した技術的思想の創作』である」と記載されており、さらに、「『ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている』とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は下降を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。」と記載されています。
以下、審査基準に挙げられた具体例に基づいて、「ハードウエア資源を用いて具体的に実現」とは如何なる場合をいうのかについて説明していきます。
●ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていない具体例(1)
<請求項に係る発明>
文書データを入力する入力手段、
入力された文書データを処理する処理手段、
処理された文書データを出力する出力手段を
備えたコンピュータにおいて、
上記処理手段によって入力された文書の要約を作成するコンピュータ。
上記請求項には、「入力された文書の要約を作成する処理」と、「処理手段」とがどのように協働しているのかが具体的に記載されていないため、ハードウエア資源を用いて具体的に実現」されているとはいえず、特許法上の「発明」に該当しない。
●ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていない具体例(2)
<請求項に係る発明>
数式y=f(x)において、a≦x≦bの範囲のyの最小値を求めるコンピュータ。
「コンピュータ」を用いるということだけでは、y=f(x)の最小値を求める処理とコンピュータとが協働しているとはいえず、特許法上の「発明」に該当しない。
コンピュータ・ソフトウエア関連発明については、特定技術分野の審査基準に基づいて、発明の成立性が判断されると説明しましたが、一般の審査基準で発明の成立性が判断される場合もあります。
●一般の審査基準で判断される例
1.一般の審査基準に挙げられた「発明」に該当しないものの類型に該当する場合
(a) 経済法則、人為的取決め、数学公式、人間の精神活動
(b) 画像データ、運動会のプログラム、コンピュータプログラムリスト等の情報の単なる提示
2.一般の審査基準に挙げられた「発明」に該当するものの類型に該当する場合
(a) 機器等(例えば、炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク等)に対する制御を具体的に行うもの
(b) 対象の物理的性質又は技術的性質(例えば、エンジン回転数、圧延温度)に基づく情報処理を具体的に行うもの
→これらが請求項に記載されている場合は、特定技術分野の審査基準で記載されている「ハードウエア資源との協働」という要件は問われない