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第7回 商標の類否判断(1)

2013.08.21 10:00

第5回の「商標の登録要件(2)」では、「他人の登録商標と同一・類似範囲にある商標は登録を認めない」という登録要件について説明しましたが、今回は、この登録要件に関連して、対比する二つの商標が類似か否かの判断をどのように行うかについて説明します。

商標の審査基準には、「商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」と規定されています。通説的な見解によれば、比較する商標の有する外観、称呼(呼び方)または観念(意味)のいずれかにおいて相紛らわしく、それぞれを同一または類似の商品または役務に使用したときに出所の混同を生じるおそれがある場合、両商標は類似であると判断するということ担っていますが、例えば、称呼は相紛らわしいが両商標の外観及び観念が相違することにより、全体として相紛らわしくない場合は、称呼の面だけからみて類似の商標と判断するのではなく、外観及び観念上をも含めて総合的に考察して、両商標の類否を判断すべきであるということです。例えは、商標A(「痛快!」)と商標B(「Tsu Kai」)とは、「ツウカイ」と「ツーカイ」という類似した称呼を生じるが、両商標は、外観において著しく相違するものであり、商標Aからは「痛快」、「とても気持ちの良いこと」、「大変愉快なこと」等の明確な観念を生じるのに対して、商標Bからは特定の観念が生じないと共に、何らかの意味合いをもって把握されることもないから、両商標は観念において明瞭に相違するとして、東京高裁は非類似として判断したという事例があります。

ただし、特許庁の審査実務では、称呼のみによって判断されることが多いので、弊所が商標の登録可能性を判断する際は、安全サイドに立って、比較する両商標の称呼が相紛らわしい場合は、両商標は類似する可能性が高いものと判断しています。

1.称呼上類似するとされた事例
・「OLTASE・オルターゼ」と「ULTASE」 東京高裁昭和60年(行ケ)第180号
・「BARICAR」と「バルカー」 東京高裁昭和60年(行ケ)第170号
・「pba」と「BBA」 東京高裁昭和60年(行ケ)第229号

2.観念上類似するとされた事例
・「星(図形)」と「レッドスター」 東京高裁昭和37年(行ナ)第215号
・「FROM A TO Z」と「A to Z」 東京高裁平成9年(行ケ)第96号
・「伏見の竜馬」と「竜馬」 東京高裁平成13年(行ケ)第122号
・「ふぐの子」と「子ふぐ」 東京高裁平成14年(行ケ)第377号

弁理士 西村陽一

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