電子本「自炊」は著作権侵害か?
2013.01.16 10:00

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人気作家や漫画家ら7氏が27日、紙の本をスキャナーで読み取り、自前の電子書籍を作る「自炊」の代行業者7社を相手取り、著作権侵害の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。
提訴したのは浅田次郎、大沢在昌、永井豪、林真理子、東野圭吾、弘兼憲史、武論尊の各氏。訴えられたのは東京都と神奈川県の7社と、それぞれの代表者。
原告側によると、作家7氏は昨年9月、自作のスキャン行為を認めないとの文書を被告らに送ったが、7社は現在も不特定多数から注文を受けて事業を継続。著作権法で認められた「私的複製」には該当せず、著作権侵害だとしている。
読売新聞 2012年11月28日 朝刊
著作権法第30条では、「私的使用」を目的とする場合は、一定の条件下で著作物の複製を認めている。
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(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という
。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用するこ
と(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その
使用する者が複製することができる。
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有
し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用い
て複製する場合
二 省略
三 省略
2 省略
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本件で問題となるのは、業者が使用するスキャナーが、法が規定する「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」に該当するか否かであろう。
また、紙媒体に表示されたコンテンツを電子情報にすることが法上の「複製」に該当するのかという点も疑義が生ずるところである。
これらの点について、裁判所がどのように判断するのかが注目される。
さらに、「自炊」が、適法であるとしても、業者及び業者への委託者が、法上の「私的使用」以外の目的に使用する可能性は否定できないので、そういった行為を未然に防止するための手当を行う必要はあるであろう。
自分の本を他人に貸すことはよくあるが、紙の本の場合、借りた本は返さなければならない。しかしながら。電子書籍の場合は、他人から提供されたコピーは返却する必要がなく、両者の手元に同一の電子書籍が残ることになり、「本を借りる」という概念が存在しないことになる。
書籍を購入すると、読んだ後の保管場所に困るので、「自炊」で作った電子書籍というのは非常に便利で使い勝手がよい。私自身も「自炊」で電子書籍を作りたいとも思うが、そのために書籍を切断して廃棄することにも抵抗があり、なかなか踏み切れないのが正直なところである。
弁理士 西村陽一

