カテゴリー:その他
アップルとグーグル和解
2014.06.04 10:00
米アップルと米グーグルは16日、スマートフォンの技術に絡む一連の特許訴訟で和解した。双方がすべての訴訟を取り下げる。今後は、両者が特許関連訴訟の乱発防止に向けた米政府の規制強化に協力するという。
特許訴訟の乱発は多額の訴訟費用がかかるほか、自由競争の妨げになるとして、各国政府などから批判が高まっている。アップルは韓国サムスン電子とも大型の特許侵害訴訟を争っているが、サムスンはグーグルが提供する基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載するスマホを製造していることから、アップルとグーグルの代理戦争との見方も多い。今回の和解がアップルとサムスンの訴訟にも影響するか、注目される。
読売新聞 2014年5月18日 朝刊アップルとグーグルは、5月16日に「相互の直接の訴訟をすべて取り下げることで合意した。今後両社は特許制度の改革のために協力」していく」という声明を発表しましたが、アップル陣営の企業やグーグル陣営の企業に対する訴訟を取り下げるわけではありませんので、アップルがサムスンを訴えている特許訴訟については取り下げの対象とはならず、今後も、両社間では熾烈な争いが続くものと思われます。
弁理士 西村陽一TPP知財分野合意へ 日米など12カ国著作権保護「70年」
2014.05.21 10:00
太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加している日米など12か国が、音楽や小説の著作権の保護期間を70年に統一することで合意する見通しになった。新薬を開発した企業が市場を独占できる「データ保護期間」は、先進国は10年程度、新興国は5年以下と、新興国側に配慮した案で決着する見込みだ。難航分野の一つである知的財産分野の交渉にめどがつき、TPP交渉全体が妥協へ向けてさらに前進する。
TPP交渉で、米国は、自国と同じ70年に統一することを提案していた。映画や音楽などを海外に輸出して著作権収入を長い間稼ぎたいためだ。これに対し、日本は関税協議で米国と対立していたため、交渉戦術上、最終的な判断は保留していたが、4月の日米協議の実質合意を受け、70年への統一に応じる方針に転じた。
ただ、日本は映画については例外的に保護期間を公開後70年としており、過去の名作映画などのDVD販売や放送・配信には大きな影響はないとみられる。
一方、マレーシアやベトナムなどの新興国は著作権料の支払いが増えることを懸念して70年への統一に反対していたが、交渉を主導する日米の足並みがそろったことで、異議を唱えにくくなった。新薬のデータ保護期間について米国が譲歩したため、著作権で新興国側が譲った面もある。
読売新聞 2013年9月14日 朝刊「データ保護期間」について、先進国は10年程度、新興国は5年以下で決着するようですが、医薬品等の「データ保護制度」について簡単に説明しておきます。
まず、医薬品等の一部の分野では、安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可等を得るにあたり所要の試験・審査等に相当の長期間を要するため、その間はたとえ特許権が存続していても、医薬品等を独占的に製造販売することができないといった問題があります。
このため、日本では、特許権の存続期間の延長制度が設けられており、医薬品の臨床試験や承認審査によって特許発明を実施できなかった期間を上限5年により補償(延長)しています。なお、本制度によって得られる医薬品特許の実質特許期間(EPL)は平均で約11年であるといわれています。また、新薬メーカーは、上述しましたように、規制当局による承認を得るために必要な試験を行う必要がありますが、その試験を行うための費用が高騰し、承認の取得もより困難になっていくにつれ、試験データそのものが、特許等の伝統的な知的財産権と同様の排他権による保護を与えることも可能なほど貴重な資産となってきています。
ジェネリック医薬品の申請者であるジェネリック医薬品メーカーが、新薬メーカーが販売承認を得るために規制当局に提供したデータを直接的又は間接的に使用することができるとすると、ジェネリック医薬品メーカーが新薬メーカーの行った努力に「ただ乗り」するという結果となり、両者間の公平性を欠くということで、新薬メーカーを保護するために、欧米においては、それらのデータに対し一定期間の保護を与えています。
一方、日本においては、このようなデータ保護制度はありませんが、新薬の承認後も引き続いて医薬品の調査を開発会社に行わせ、承認時に指定された調査期間(再審査期間)後に、その安全性等の再審査を行うという「再審査制度」があり、
先発医薬品が再審査期間中にある場合は、ジェネリック医薬品であっても承認申請にあたって先発医薬品と同等の資料が要求されるため、再審査が終了するまではジェネリック医薬品の承認申請は実質的にはできません。なお、現在、日本においても、このデータ保護制度の導入についてその検討が行われているようです。ここで、特許権の存続期間とデータ保護期間とのバランスが問題となってきます。
弁理士 西村陽一「じぇじぇじぇ」商標出願 ロケ地・岩手の菓子店
2013.12.04 10:00
9月に放送が終了したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった岩手県久慈市の老舗菓子店が、ドラマがきっかけで流行した方言「じぇじぇじぇ」を特許庁に商標出願中だ。市外の業者に先に商標登録され、トラブルになるのを防ぐためで、独占する意図はないとしている。
出願したのは1930年創業の「沢菊」。同市小袖地区で驚きを表現する「じぇじぇじぇ」がドラマに登場したのを受け、5月初旬に方言を冠した焼き菓子を発売し、5月10日に菓子の分野で「じぇじぇじぇ」と「ジェジェジェ」を」商標出願した。同社の宮沢陽一社長は「他店にも自由に使ってもらい、久慈を盛り上げてほしい」と話している。
読売新聞 2013年11月14日 朝刊
ドラマで使われて広く認知されるようになった流行語を、直接、関係ない第三者が商標出願することに道義的な問題あると指摘する専門家もいるようです。
しかしながら、「じぇじぇじぇ」は東北地方で一般的に使用されている感嘆を表す言葉であり、それが特定の商品(菓子)について広く使用されていないのであれば、その言葉自体がNHKのドラマで有名になったからといって、菓子に使用する商標として一私人に独占させることは、特に問題がないものと考えます。私も、以前、NHKのドラマの舞台となった地域の活性化のために行っているプロジェクトの名称を、そのプロジェクト参加者である飲食店の経営者の方からの依頼により商標出願したことがありました。
その方も、「じぇじぇじぇ」の出願人と同様に、その名称を自社で独占する意図はなく、そのプロジェクトの名称を他の地域の人たちに使用されたくないという思いで、とりあえず代表して自社で権利化しようと考えておられました。商標出願の審査段階では、プロジェクトとの関係が認められない出願人が自己の商標として採択することは、プロジェクトの名称を使用した観光振興や地域おこしなどの公益的施策の遂行を阻害することになるとして、公序良俗違反として拒絶理由通知が出されましたが、審査官と協議した結果、プロジェクトの参加者全員の承諾が得られれば、公序良俗違反の拒絶理由は解消されるとのことでしたので、参加者の承諾を得る作業を行われたようですが、結局、参加者全員の承諾を得るまでに時間がかかりすぎるということで、権利化を断念されました。
特定の名称を使用して観光振興や地域おこしなどの公益的施策を行う場合は、その名称をどのようにして保護するかを地域全体で考えていく必要があると思います。
弁理士 西村陽一
IT知財紛争集団線 米アップル手動の企業連合 グーグル狙い撃ち
2013.11.27 10:00
[シリコンバレー=兼松雄一郎]知的財産をめぐり米アップルと米グーグル・韓国サムスン電子連合の対立が激しさを増している。アップルなどの特許を共同保有する管理会社がこのほど特許侵害でグーグルなどを米連邦地裁に提訴した。ネット検索の内容に合った広告を選ぶ技術などが対象で、検索が主力のグーグルを狙い撃ちした形。特許管理会社を使い間接的にグーグル陣営への攻撃に出ている。
訴訟の相手はグーグルを筆頭に、同社の基本ソフト(OS)「アンドロイド」を使う主な端末メーカーが並ぶ。今回の訴訟はアップルがグーグルとアンドロイドの最大の採用者であるサムスンの連合に対し仕掛けた代理戦争の色合いが強い。
アップルとサムスンは巨額の訴訟費用をかけて」世界各地で特許紛争を繰り広げている。今回の訴訟もその局地戦の一つと言える。IT大手はそれぞれの特許紛争を抱え、個別企業間の関係は錯綜してはいるが、大きなくくりではアンドロイド陣営とアップルの戦いを軸とした構図が続きそうだ。
大手IT(情報技術)企業が共同で特許を購入したり防衛したりするようになったのは、スマートフォン(スマホ)や検索などIT製品・関連サービスで使う特許数が莫大になったことが背景にある。
例えばスマホには10万件もの特許が必要と言われる。1社だけでその特許群をすべて開発・購入することは難しく、訴訟対策にも限界がある。一方、共同で多数の特許を購入・管理すれば、お互いに特許を使えるうえ、数の力を背景に特許侵害を巡る和解交渉などを祐理に進めやすい。
日経産業新聞 2013年11月6日
OSを非公開にしているアップルは、グーグルが無償公開しているOS(Android)を採用しているHTCやサムスンを相手取って特許侵害で裁判を展開しており、それに対抗してグーグル連合も訴訟を繰り返しています。
PC向けOSのデファクトスタンダードを握ったマイクロソフトがPC市場を席巻したように、モバイルOSのデファクトスタンダードをどちらの陣営が握るかということは、それぞれの陣営にとって、その後の展開に極めて重要であり、クローズ戦略を採用しているアップルと、オープン戦略を採用しているグーグルとの代理戦争であるといえます。
2013年11月12日に公表されたスマートフォンの市場調査では、グーグルのOS「Android」を搭載する端末の世界シェアが80%を超えており、グーグル陣営が優勢であることは否めません。
しかしながら、ある企業の特許が技術標準として採択される場合、他企業がその特許を使用する時、特許権者は「公平で、合理的、かつ非差別的」にライセンススしなければならないというFRAND条項があり、グーグル陣営のサムスンやモトローラが所有している基本特許、特に無線技術関連特許は標準必須特許であってFRAND条項の影響を受けるものが多くありますので、グーグル陣営の標準必須特許が有効な武器として機能しない可能性もあります。
このように、両陣営の知財紛争は予断を許さない状況になっておりますので、今後、両陣営がどのような戦い方をし、最終的にどちらの陣営が勝利するのかは非常に興味があるところです。
弁理士 西村陽一
商標登録これでOK おおいた県おおいた
2013.10.16 13:48
大分県の観光キャッチフレーズ「おんせん県おおいた」とロゴマーク=イラスト=が商標登録される見通しになった。「おんせん県」では登録できなかったが、名称に「おおいた」と加えることで再挑戦が実った。
県は観光キャッチフレーズ「日本一のおんせん県おおいた味力も満載」で使っている「おんせん県」の表記について、類似の登録を防ぐため、昨年10月に商標登録を出願。しかし、特許庁は今年5月、「温泉が多い県を紹介する言葉として広く使われている」として認めなかった。
県はその後、弁理士ら専門家に相談。「おんせん県おおいた」として地域を特定して出願すれば、登録の可能性があるとの助言を受け、再出願したところ、県に7日、特許庁から、登録の前提となる「登録査定」の書面が届いたという。
読売新聞 2013年10月8日 夕刊
——————————————————————————–大分県は、昨年10月9日に「おんせん県」という商標を、「菓子」や「宿泊施設の提供、入浴施設の提供、企画旅行の実施、旅行者の案内」等のサービスを指定して商標登録出願しましたが、「おんせん県」という商標は、商標が本来有していなければならない「自他商品・役務の識別力を備えていないという理由で拒絶されました。
そこで、大分県は、湯おけをモチーフにしたロゴマークと、「おおいた」という県名を追加した新たな商標を出願し直して許可されたということです。
このように、識別力のない商標(ネーム)を登録したい場合、識別力のある図形や文字(単語)を付加することによって登録に導くという手法がよくとられます。
例えば、牛乳という商品に対して「おいしい牛乳」は、普通名称「牛乳」に「おいしい」という品質表示を結合したもので識別力がありませんので、以下のように、識別力のある特徴的な言葉や社名等を付加することで、各社商標権を取得しています。
「わが家のおいしい牛乳」(登録4309691号)
「明治乳業\おいしい牛乳」(登録4639886号)
「森永のおいしい牛乳」(登録5109129号)弁理士 西村 陽一
書籍電子化 自炊代行業 禁止命じる 東京地裁 作家の複製権侵害
2013.10.04 13:33
書籍をスキャナーで読み取って電子化する「自炊」の代行業は著作権法に違反するとして、作家の浅田次郎さん(61)や漫画家の弘兼憲史さん(66)ら7人が東京都内の2業者を相手取った訴訟で、東京地裁は30日、2業者に事業の禁止と計140万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。大須賀滋裁判長は、業者による書籍の電子化は、著作権に含まれる、著作者の「複製権」を侵害するとの初判断を示した。
被告側は「顧客の指示で手伝っただけで、複製の主体は顧客だ」と主張したが、判決は、裁断やスキャンという主要な電子化作業を被告が担っていることから、「複製の主体は業者」と判断。被告が原告らの書籍の電子化は受け付けないとしていたのに、実際は注文に応じていたことも認定し、「今後も侵害の恐れがある」として事業禁止を命じた。
読売新聞 2013年10月1日 朝刊
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二 省略
三 省略
2 省略
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――本判決は、「複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない」という理由で、書籍を保有する利用者による複製に該当しないと認定したものである。
しかしながら、自炊業者は、利用者の手足として複製していると考えることができるので、書籍の保有者が複製作業に関与しているか否かによって、その判断を行うことには疑問が残る。この点について、本判決は、「このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。」と認定しているが、どうもすんなりと納得することはできない。
弁理士 西村陽一
NTTドコモ顧客流出止まらず 交渉5年 苦境でアップルと妥協
2013.09.18 10:00
日本では、ソフトバンクモバイルが2008年7月にiPhone(アイフォーン)を初めて販売したが、NTTドコモも同じ時期に米アップルと交渉を始めていた。
「NTTの研究所が持つ携帯電話に関するすべての特許を使わせてほしい」
アップルが交渉で、ドコモに突きつけた要求は、NTTグループにとって衝撃だった。当時、評価が定まっていなかったアイフォーンの販売と引き換えに、NTTが長年培ってきた特許の使用を求めるアップルの交渉姿勢にNTT側は不信感を強め、交渉は物別れに終わった。
その後も、ドコモはアップルとの話し合いを断続的に続けてきたが、両社の溝は埋まらなかった。ドコモは、米グーグル社の基本ソフトウェア(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンの販売に力を入れる。いったんはアイフォーンに依存しない戦略に傾きかけたが、11年10月にKDDI(au)が販売を始めると、ドコモからの顧客流出に拍車がかかった。
読売新聞 2013年9月14日 朝刊
ソフトバンクに続いてauがiPhoneを販売し始めると、ドコモからの顧客の流出に拍車がかかったようだ。
NTTドコモは、ソフトバンクがiPhoneを販売し始めた当りから、iPhoneの販売についてアップルと交渉を始めていたようだが、NTTの研究所が持つ携帯電話に関する全ての特許についてのライセンスを求めたアップル側の要求をのむことができず、結果的にiPhoneの導入が遅れたことがこういった状況を招いたといえる。
本事例は、オープンイノベーションの時代に入った今日、経営資源としての特許(技術)をどのように活用すればよいのかということを教えている。「虎の子」のインバーター技術を中国メーカーに提供する代わりに、「安く作る技術とそれによって得られる市場」を獲得したダイキンの成功例もあるように、技術の独占にこだわらずに、特許を含めた自社技術を如何に企業経営に役立てるのかが問われる時代に入ってきたといえる。
当時、iPhoneの評価が定まっていなかったという状況で、携帯電話に関するNTTの全保有特許についてアップルにライセンスを与えるという決断ができなかったという事情も理解できるが、iPhoneを導入したソフトバンクの躍進ぶりをみれば、もう少し早く対処すべきではなかったか、経営判断の難しいところであろう。
弁理士 西村陽一
インド VS 欧米 「薬特許」紛争 スイス大手の申請認めず
2013.04.15 14:19
インド最高裁が、スイス製薬大手「ノバルティス」の抗ガン剤の特許を認めない判決を下し、波紋が広がっている。特許を安易に認めていけば、成分が同じ、より安価な薬の普及を阻害し、貧困層の健康に悪影響を及ぼすとするインドや発展途上国と、特許の侵害は新薬開発の停滞に直結するという欧米の大手製薬会社の主張は平行線をたどるばかりだ。
読売新聞 2013年4月13日 朝刊
医薬特許は人命に関わる場合がある点で、機械分野、電気分野等の他の特許と同じように取り扱うことができないといえます。従って、製薬会社と世界の低所得層との利害対立を如何に調整するかということが重要な課題であると考えます。
確かに、新薬を安く手に入れることができれば治療の幅が広がりますので、低所得層にとっては好ましいことですが、製薬会社は莫大な投資を行って医薬品を開発していますので、その投資を回収して大きな利益を上げることができなければ、製薬会社に新薬を開発するインセンティブが働かず、新薬の開発が進まないという問題が出てきます。
こういった問題を解決するために、製薬会社が国毎に新薬の価格を段階的に設定するということも提案されていますが、こういったやり方では、新興国において安い価格で販売された新薬が新興国から先進国に流入し、新薬の値崩れが起こるというおそれがあります。つまり、新興国から先進国に安い新薬が流入しないように、どうすれば、世界の低所得層だけにジェネリック医薬品の価格で新薬を提供できるかということがポイントになります。
例えば、次のような仕組みではいかがでしょうか? 先進国と新興国とで新薬の価格設定を変えるのではなく、世界中同一価格で新薬を販売し、製薬会社が、その販売数に応じて新興国の政府にジェネリック医薬品との価格差分を還元し、その国の医療制度の中で、その国の国民がその国の医療機関等を通じて新薬を実際に使用したときだけ、新薬をジェネリック医薬品の価格で提供できるようにするという仕組みです。
製薬会社としても、市場規模の大きいBOPビジネスを如何に考えるかが重要であり、新興国とwin/winの関係を構築できるような優れたビジネスモデルを提案していくことができるかが、今後の鍵になるものと考えます。
弁理士 西村陽一
中韓特許和訳システム 政府構築へ 企業、無料で検索
2013.04.03 10:00
政府は2013年度から、中国と韓国で出願され認められた特許を日本語に翻訳し、企業関係者などが自由に閲覧・検索できるデータベース作りに着手する。中国や各国でライバル企業が特許を出願した場合、現地の言葉で書かれた特許内容を性格に理解するのは多くの日本企業にとって困難を伴う。このためライバル企業がどのような特許を出願・保有しているかを迅速に把握し、日本企業が知的財産を巡る紛争に巻き込まれることを防ぐ。13年度はまず約20億円の予算を投じ、今後数年かけて順次、でデータ蓄積を図る。
読売新聞 2013年3月4日 朝刊
現在、世界の特許文献において、中国文献が急増しており、企業にとって、中国文献へのアクセス性をいかに担保するかということが喫緊の課題となっている。特許庁は、このような急増する中国文献への対応として、日本語によるアクセス性を向上させるために、2013年3月19日より(独)工業所有権情報・研修館の特許電子図書館(IPDL:Industrial Property Digital Library)を通じて、機械翻訳を利用して作成した中国実用新案和文抄録データの検索・照会サービスを開始している。
具体的には、特許電子図書館のトップページを開き、検索メニューの「特許・実用新案検索」から「3.公報テキスト検索」を選択し、公報種別で、「中国特許和文抄録」、「中国実用新案機械翻訳和文抄録」のチェックボックスにチェックを入れた状態でテキスト検索を実行すると、中国特許和文抄録や中国実用新案機械翻訳和文抄録も併せて検索することができるようになっている。
また、中国出願の公開番号等が分かっている場合は、検索メニューの「特許・実用新案検索」から「10.外国公報DB」を選択し、発行国・機関の中国(CN)の入力欄において、所定の入力形式に従って文献番号等を入力すると、公開特許和文抄録、実用新案小海翻訳和文抄録を見ることができるようになっている。弁理士 西村陽一
MBA学位取得しました。
2013.03.27 10:00
今月の16日に学位授与式があり、経営管理修士(MBA)の学位を取得いたしました。
2年前(2011年)の4月に、関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科(ビジネススクール)に入学し、今年の3月までの2年間、経営の勉強をしてまいりました。仕事をしながらの勉強は大変でしたが、それまで知らなかった様々な知識に触れることができ、非常に刺激を受けました。
最後の半年は、「経営」、「マーケティング」、「ファイナンス」、「テクノロジー・マネジメント」、「アントレプレナー」の5つのプログラムから1つのプログラムを専攻すると共に、その専攻プログラムに沿って自らのテーマを決めて研究をし、その成果を論文として提出しなければなりません。
私は、ファイナンスプログラムを専攻し、既存商品や競合企業との関係で、新商品をどのようなタイミングで投入すれば、企業価値を最大化できるかということについて研究しました。
私は、技術を相手にする弁理士という仕事をしていますので、テクノロジー・マネジメントプログラムにしようかとも迷ったのですが、「ファイナンス」、「金融工学」、「ゲーム理論」、「企業ファイナンス」といった講義で、経営者の仕事は企業価値を最大化することで、その企業価値(事業価値)は計算によって求めることができるということを教えていただき、それが目から鱗で、最終的にファイナンスプログラムを専攻することに決めました。
「ファイナンス」という言葉からは「金融」というイメージがでてきますが、私が学んだ「ファイナンス」は、例えば、企業価値や事業価値といった様々な価値を計算することによって、経営者やマネジャーが少しでも的確な経営判断や意思決定を行うことができるようにするというものでした。例えば、M&Aでは買収しようとする企業の価値を求めなければ、いくらで買収すれば自社の企業価値を高めることができるかということも分かりませんし、企業が新規事業を立ち上げる際、その事業の価値を求めなければ、その事業をやるべきか否かの意思決定を行うことはできません。つまり、価値が分からなければ、勘で決めるしかありませんので、ギャンブル性が高くならざるを得ません。
企業経営においては、不確実な要素が数多く存在していますので、企業価値や事業価値というものを正確に計算することは不可能ですが、想定しうる種々な情報を使って価値を計算することで、経営判断や意思決定が大きく間違っていないというところまで持っていくことは可能であると考えられます。
今後は、私が学んだ「ファイナンス」、「リアルオプション」、「ゲーム理論」等の知識を企業経営、特に、中小企業の経営者の方に活用していただきたいと考えております。そこで、近々、「MBA弁理士のファイナンス講座」を開講し、ファイナンス理論等を少しずつ分かりやすくご説明していきたいと思っていますので、興味のある方は是非お読みください。
また、修士論文「リアルオプションとゲーム理論を用いた新商品投入の適正タイミングの考察」修士論文を書くに当たって、事業価値評価モデルを構築し、様々なパラメータを入力することによって、自社の新商品をどのようなタイミングで投入すればよいのかを計算することができるエクセルファイルを作成しておりますので、ご興味のある方はご連絡ください。エクセルファイルをお送りさせていただきますので、実際に使ってみて下さい。その際は、是非フィードバックをお願いします。
今後ともよろしくお願いいたします。
弁理士 西村陽一

