取り組み事例

他社の権利を侵害しない紙パック用口栓の開発事例

福岡県 商社 匿名

お客様は、主として化学品を取り扱っておられる商社です。今回は、お酒用の紙パックの口栓を、ある酒造メーカーに供給することになったので、権利侵害で訴えられないような口栓を作りたいということで、弊所に相談に来られました。

お話を伺うと、この種の口栓は、ワンタッチで開閉することができるプラスチック製の口栓で、特定の液体商品の容器に主として使用されており、当時、某大手メーカーが、その大部分を供給しているということでした。

そこで、その大手メーカーが、同種の口栓についてどのような特許権を持っているのかを調べて欲しいというご依頼を頂きました。

大手が特許権だけでなく意匠権も取得していた

弁理士である私の経験上、こういった製品は、機能だけでなくデザインも重視されるので、その大手メーカーは、特許権だけでなく意匠権も取得している可能性が高いことが予測できました。そこで、お客様には、特許調査だけでなく、意匠調査も同時に行うことをご提案しました。お客様も、弊所の提案にご納得いただけましたので、当初ご依頼の特許調査だけでなく、意匠調査についても並行して行うことにしました。

そうすると、案の定、その大手メーカーは、この種の口栓について、特許権だけでなく数多くの意匠権を取得していることが分かりました。

大手の権利範囲から外れるようにして権利化に成功

そこで、その調査結果に基づき、お客様、お客様が製造を委託する口栓の製造メーカー及び弊所の三者間で、口栓をどのような形状にすべきかについてディスカッションを行いました。最終的に、某大手メーカーの特許権及び意匠権の権利範囲から外れるような新しい口栓のデザインを決定しました。

このようにして出来上がった口栓は、結構、斬新なデザインに仕上がっておりましたので、お客様には、この口栓について、意匠権を取得すべく、意匠登録出願を行うことをご提案しました。意匠登録されるということは、そのデザインの口栓が第三者の意匠権を侵害しないことをお上が認めたということ、即ち、お上から、そのデザインの口栓を独占的に製造・販売することが認められたということです。従って、新口栓が意匠登録されれば、某大手メーカーを含む第三者の意匠権を侵害するとして訴えられる可能性が低くなり、ビジネスをよりリスクのない状態で有利に展開することができると考えたからです。

お客様は、この提案についても受け入れていただけましたので、意匠登録出願を行い、最終的に権利化することができました。

さらなる口栓改良の必要が生じる

数ヶ月後、先に登録したデザインの口栓が、酒造メーカーに設置されている既存の口栓装着機で、紙パックにうまく装着することができないことが判明しました。そのため、口栓を改良せざるを得なくなったということで、再び、相談に来られました。

改良した口栓を実際に見せていただきましたが、改良後の新口栓のデザインは、既に意匠登録している改良前の旧口栓のデザインの権利範囲に対して、その範囲内にあるのか、範囲外にあるのかが微妙なデザインでした。新口栓のデザインが旧口栓のデザインの類似範囲内であれば、既に登録している旧口栓の意匠権で保護することができます。しかし、類似範囲外であれば、新口栓のデザインについても、意匠登録しなければ保護することができず、某大手メーカーを含む第三者の意匠権を侵害するとして訴えられるリスクが高くなります。とりあえず、改良後の口栓のデザインについて、意匠登録出願をすることをご提案いたしました。

早期審査で事業計画を予定通り進めることが可能に

ここで、新口栓の酒造メーカーへの供給開始時期から逆算すると、早急に口栓の金型を製造しなければなりません。しかし、金型の製作費用は1000万円程度かかります。もし、前倒しで金型を作成した後、第三者の意匠権の存在によって、新口栓についての意匠登録が拒絶された場合は、その金型を使用することができなくなり、1000万円程度の金型作成費用が無駄になるという問題が発生しました。

新口栓については、第三者から実施させて欲しいとの申し込みがあったと伺っておりましたので、早期審査の申請が可能であると判断し、お客様には、特許庁に対して早期審査の申請をすることをご提案いたしました。意匠登録出願の審査は、通常、半年から1年程度かかります。しかし、早期審査の申請が受け入れられると、2ヶ月程度で審査の結果がでます。その程度であれは、金型の製作を待つことができるという判断の下、新口栓に関する事業計画書や第三者からの実施許諾申込書等の必要書類を準備して早期審査の申請を行いました。

その結果、新口栓についても意匠登録出願後1月半で登録が認められ、何とか当初の予定通りに事業計画に沿って新口栓の供給事業を進めることができました。

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