知的財産契約(1)
2013.09.25 10:00
今回から知的財産に関する契約についての講座を開設します。
今回は、まず、知的財産の特殊性に着目して知的財産契約の全体像を説明いたします。
まず、知的財産契約は、大きく以下の5つに分類されます。
1.知的財産権の移転に関する契約(権利譲渡契約、職務発明契約等)
2.知的財産権の利用に関する契約(ライセンス契約等)
3.知的財産権の創出に関する契約(共同研究開発契約等)
4.知的財産権を担保化するための契約(知的財産担保契約等)
5.その他(秘密保持契約)知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を推進することを目的として制定された知的財産基本法では、「知的財産権」を、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利と定義しています。なお、「育成者権」とは、品種登録された植物の新品種を業として独占的に利用する権利のことをいいます。
こういった知的財産権には以下のような特質がありますので、これらの特質に配慮した契約条項が必要になります。
1.権利侵害の容易性
取引の対象が無体物であるため、物理的支配ができず、無権利者であっても容易に知的財産を利用することができます。
2.権利内容の不明確性
例えば、特許権の権利範囲は、特許請求の範囲により確定されますが、その内容は有体物のように明確ではなく、どの部分が取引の対象になっているかも明確ではありませ ん。
3.経済的価値の不確実性
知的財産権について交換価値を把握するのが難しく、知的財産権を利用した場合の対価を客観的に把握するもの難しいという不確実性を有しています。
4.権利の脆弱性
知的財産権は、後日無効になる可能性を有しています。
5.権利の経済財としての事業支配力性
知的財産権は、経済財として事業支配力の強力な武器となるため、社会的影響力が大きく、経済秩序との調和という視点が求められています。また、知的財産契約は、民法に規定されている「契約自由の原則」により、その内容を自由に定めることができますが、民法90条に規定されている公序良俗に反する場合や民法91条に規定されている強行規定に反する場合は、契約自体が無効となりますので、そのあたりも考慮する必要があります。
特に、ライセンス契約等において、不公正な取引方法に該当する場合は、独占禁止法からの規制も受けますので、不公正な取引方法に該当しないような契約条項を作成する必要があります。
NTTドコモ顧客流出止まらず 交渉5年 苦境でアップルと妥協
2013.09.18 10:00
日本では、ソフトバンクモバイルが2008年7月にiPhone(アイフォーン)を初めて販売したが、NTTドコモも同じ時期に米アップルと交渉を始めていた。
「NTTの研究所が持つ携帯電話に関するすべての特許を使わせてほしい」
アップルが交渉で、ドコモに突きつけた要求は、NTTグループにとって衝撃だった。当時、評価が定まっていなかったアイフォーンの販売と引き換えに、NTTが長年培ってきた特許の使用を求めるアップルの交渉姿勢にNTT側は不信感を強め、交渉は物別れに終わった。
その後も、ドコモはアップルとの話し合いを断続的に続けてきたが、両社の溝は埋まらなかった。ドコモは、米グーグル社の基本ソフトウェア(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンの販売に力を入れる。いったんはアイフォーンに依存しない戦略に傾きかけたが、11年10月にKDDI(au)が販売を始めると、ドコモからの顧客流出に拍車がかかった。
読売新聞 2013年9月14日 朝刊
ソフトバンクに続いてauがiPhoneを販売し始めると、ドコモからの顧客の流出に拍車がかかったようだ。
NTTドコモは、ソフトバンクがiPhoneを販売し始めた当りから、iPhoneの販売についてアップルと交渉を始めていたようだが、NTTの研究所が持つ携帯電話に関する全ての特許についてのライセンスを求めたアップル側の要求をのむことができず、結果的にiPhoneの導入が遅れたことがこういった状況を招いたといえる。
本事例は、オープンイノベーションの時代に入った今日、経営資源としての特許(技術)をどのように活用すればよいのかということを教えている。「虎の子」のインバーター技術を中国メーカーに提供する代わりに、「安く作る技術とそれによって得られる市場」を獲得したダイキンの成功例もあるように、技術の独占にこだわらずに、特許を含めた自社技術を如何に企業経営に役立てるのかが問われる時代に入ってきたといえる。
当時、iPhoneの評価が定まっていなかったという状況で、携帯電話に関するNTTの全保有特許についてアップルにライセンスを与えるという決断ができなかったという事情も理解できるが、iPhoneを導入したソフトバンクの躍進ぶりをみれば、もう少し早く対処すべきではなかったか、経営判断の難しいところであろう。
弁理士 西村陽一
第10回 商標の類否判断(4)
2013.09.11 10:00
今回は、前回に続いて結合商標の類否判断、特に、審査基準に挙げられている7つの具体例について説明します。
1)形容詞的文字(品質や原材料等を表示する文字)を有する結合商標は、それが付加されていない商標と類似する。
Ex.「スーパーライオン」と「ライオン」は類似
※「スーパー」は、商品の品質表示
※「スーパー」を別の語に置き換えることによって登録可能性が高くなる場合があります。
2)大小のある文字からなる商標は、原則として大きさの相違するそれぞれの部分からなる商標と類似する。
Ex.「富士白鳥」と「富士」または「白鳥」とは類似
※「富士」または「白鳥」という商標が既に登録されている場合は、「富士白鳥」というふうに両者の文字サイズを同じにして、できるだけ「富士」と「白鳥」とが一体不可分であるように表示することで、登録可能性が高くなります。
3)著しく離れた文字の部分からなる商標は、原則として、離れたそれぞれの部分のみからなる商標と類似する。
Ex.「鶴亀 万寿」と「鶴亀」または「万寿」とは類似
※「鶴亀」または「万寿」という商標が既に登録されている場合は、「鶴亀万寿」というふうに両者を連続して表示することで、登録可能性が高くなります。
4)長い称呼を有するため、又は結合商標の一部が特に顕著であるため、その一部分によって簡略化される可能性がある商標は、原則として、簡略化される可能性がある部分のみからなる商標と類似する。
Ex.「cherryblossomboy」と「チェリーブラッサム」とは類似
※こういった商標は、簡易迅速を旨とする取引きには必ずしも適さないため、実際の取引きにおいては、その一部が省略されてそれ以外の部分をもって略称されることが少なくないからです。
※あまり長い称呼を有する商標は、読みにくく、言いにくく、覚えにくいので、良い(売れる)ネーミングとはいえませんね。
5)指定商品又は指定役務について慣用される文字と他の文字とを結合した商標は、慣用される文字を除いた部分からなる商標と類似する。
Ex.清酒について「菊正宗」と「菊」とは類似
※「正宗」は、指定商品「清酒」についての慣用商標
※例えば、「清酒」について、「正宗」という語を使用したいのであれば、「正宗」と結合させる他の語の登録可能性を高める必要があります。
6)指定商品又は指定役務について需用者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。
Ex.化粧品について「ラブロレアル」と「L’REAL」や「ロレアル」とは類似
※有名ブランドの登録商標を商標の一部に使用すると、商標登録が認められないばかりではなく、商標権侵害として提訴される恐れもありますので、使用しないようにしましょう。
6)商号商標については、商号の一部分として通常使用される「株式会社」「紹介」「CO.」「K.K.」「Ltd」「組合」「協同組合」等の文字が出願に係る商標の要部である文字の語尾又は語頭のいずれにあるかを問わず、原則として、これらの文字を除外して商標の類否を判断するものとする。
※「株式会社」「紹介」「CO.」「K.K.」「Ltd」「組合」「協同組合」等の文字は識別力がないため、このように取り扱うのは当然でしょう。弁理士 西村陽一
第9回 商標の類否判断(3)
2013.09.04 10:00
今回は二以上の語、図形または記号の組み合わせからなる商標(これを、「結合商標」といいます。)の類否判断について説明します。
商標の審査基準には、「結合商標の類否の判断は、その結合の強弱の程度を考慮し、例えば、次のように判断するものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念が生ずることが明らかなときは、この限りではない。」と規定されており、具体例としては、7つのパターンが挙げられています。
商標の類否判断は、基本的に商標を構成する全体の文字等により生ずる外観、称呼または観念により行うのが原則です。しかし、結合商標については、その結合の程度が弱い場合は、分離して類否判断するということです。
二以上の語の結合の状態は、以下点を考慮して認定されます。
①構成上一体であるか
②全体の構成から一定の外観、称呼又は観念が生ずるか
③自他商品の識別力を有する部分とそうでない部分がないか
④一部に特に需用者に印象づける部分がないか
⑤称呼した場合淀みなく一連に称呼しうるかつまり、これらが否定されるときは、結合の程度が弱く、識別力を有する構成の一部(要部)をもって取引きに使用される場合が少なくないからという理由で、一部を分離ないし抽出して類否判断がなされることになります。
なお、自他商品又は役務の識別力が強くない語同士の結合の場合は結合の状態が強く、一連に称呼、観念されるのが経験則であるとする判例があります(平成14年(行ケ)266号 東京高平成15年1月21日 速報334-11278)。
次回は、審査基準に挙げられている具体例について説明します。
弁理士 西村陽一
第8回 商標の類否判断(2)
2013.08.28 10:00
第7回の「商標の類否判断(1)」では、商標の有する「外観」、「称呼」及び「観念」といった判断要素について説明しましたが、今回は、商標の類否判断を行う判断主体についての基準を説明します。
商標の審査基準には、「商標の類否の判断は、商標が使用される商品又は役務の主たる需要層(例えば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品又は役務の取引きの実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならない。」と規定されています。
1.「取引きの実情」とは、以下に示すようなことを意味しています。
・需要者の範囲(「専門家(商品が原材料)」か「一般消費者(商品が最終製品)」か)
・商品の流通経路(例えば、商品の販売主体が専門業者か一般小売業者か)
・商標の採択の傾向(例えば、薬剤は「ドイツ語」、化粧品は「フランス語」等)
・商標の使用状態(取引きが商標より生ずる称呼によるのか、全体構成の外観によるのか)2.「需要者の通常有する注意力」
「需要者」には、取引者及び一般消費者の双方が含まれ、「取引者」とは、当該商品の製造・販売または役務の提供に従事し、一定の商品や役務の知識を有する者を言います。
そして、商標に払われる注意力は商品や需要者によって異なるので、それぞれに応じた注意力を基準にして判断するということです。
・子供は、欧文字や漢字の違いは分かりにくいが、図形やキャラクターの違いは見分けやすい
・安価な使い捨て商品と高価な耐久商品とでは注意力が異なる
・一般消費者が払う注意力と専門家が払う注意力とは異なる
・注意力が散漫な者や慎重な者は基準とならない弁理士 西村陽一
第7回 商標の類否判断(1)
2013.08.21 10:00
第5回の「商標の登録要件(2)」では、「他人の登録商標と同一・類似範囲にある商標は登録を認めない」という登録要件について説明しましたが、今回は、この登録要件に関連して、対比する二つの商標が類似か否かの判断をどのように行うかについて説明します。
商標の審査基準には、「商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」と規定されています。通説的な見解によれば、比較する商標の有する外観、称呼(呼び方)または観念(意味)のいずれかにおいて相紛らわしく、それぞれを同一または類似の商品または役務に使用したときに出所の混同を生じるおそれがある場合、両商標は類似であると判断するということ担っていますが、例えば、称呼は相紛らわしいが両商標の外観及び観念が相違することにより、全体として相紛らわしくない場合は、称呼の面だけからみて類似の商標と判断するのではなく、外観及び観念上をも含めて総合的に考察して、両商標の類否を判断すべきであるということです。例えは、商標A(「痛快!」)と商標B(「Tsu Kai」)とは、「ツウカイ」と「ツーカイ」という類似した称呼を生じるが、両商標は、外観において著しく相違するものであり、商標Aからは「痛快」、「とても気持ちの良いこと」、「大変愉快なこと」等の明確な観念を生じるのに対して、商標Bからは特定の観念が生じないと共に、何らかの意味合いをもって把握されることもないから、両商標は観念において明瞭に相違するとして、東京高裁は非類似として判断したという事例があります。
ただし、特許庁の審査実務では、称呼のみによって判断されることが多いので、弊所が商標の登録可能性を判断する際は、安全サイドに立って、比較する両商標の称呼が相紛らわしい場合は、両商標は類似する可能性が高いものと判断しています。
1.称呼上類似するとされた事例
・「OLTASE・オルターゼ」と「ULTASE」 東京高裁昭和60年(行ケ)第180号
・「BARICAR」と「バルカー」 東京高裁昭和60年(行ケ)第170号
・「pba」と「BBA」 東京高裁昭和60年(行ケ)第229号2.観念上類似するとされた事例
・「星(図形)」と「レッドスター」 東京高裁昭和37年(行ナ)第215号
・「FROM A TO Z」と「A to Z」 東京高裁平成9年(行ケ)第96号
・「伏見の竜馬」と「竜馬」 東京高裁平成13年(行ケ)第122号
・「ふぐの子」と「子ふぐ」 東京高裁平成14年(行ケ)第377号弁理士 西村陽一
アップル特許2件侵害 米貿易委 サムスンに流通禁止命令
2013.08.19 10:55
米アップルと韓国サムスン電子がスマートフォン(高機能携帯電話)などの特許侵害を巡り争っている問題で、米国際貿易委員会(ITC)は9日、サムスンがアップルの特許の一部を侵害しているとの判断を示し、一部製品の米国内への輸入や販売、流通を禁止する命令を出した。侵害を認定したのは、アップルが申し立てた6件のうち、タッチスクリーン技術などに関連する2件。禁止対象はサムスン製の旧モデルとみられる。
ITCは両社の訴えを受けて特許侵害について調査していた。今年6月にはアップルによる一部特許の侵害を認め、「iPhone(アイフォーン)」など一部モデルについて米国への輸出や販売などを禁じる排除命令を出したが、オバマ大統領が拒否権を発動して命令を覆した。サムスン製品に対する排除命令を巡るオバマ大統領の判断が注目される。
読売新聞 平成25年8月10日 夕刊
特許権 社員から企業へ
2013.08.14 10:00
政府閣議決定 知的財産の基本方針
政府は7日、「知的財産政策に関する方針」を閣議決定した。従業員が業務で発明した特許権について、従業員が権利を持つ現在の制度を改め、企業が保有できるようにすることが柱だ。特許法などに関連する法律の改正などを検討し、2014年度中に結論を出す。
現在は、業務で発明した特許権は社員側に帰属し権利を譲渡したり、会社が特許により利益を得たりした場合の対価を、企業と社員が話し合って決める仕組みになっている。
基本方針では、制度改正に当たって、特許権を▽会社に帰属させる▽会社と社員の間でどちらに帰属させるかを契約で決める-の両案を明記した。
読売新聞 2013年6月8日 朝刊
特許買い取り官民出資 ファンド設立へ 国外流出を防止
2013.08.07 10:00
官民ファンドの産業革新機構とパナソニック、三井物産は、日本企業を対象に、活用されていない特許を買い取り、別の日本企業に売却・貸与するファンドを設立する。経営難やリストラで日本企業が売却した特許が韓国や中国の企業などに買われることで日本の製造業などの競争力を損なう事態を防ぐ。日本企業の知的財産を守るための初のファンドとなる。
革新機構などが25日発表し、本格的に業務を始める。ファンドには当初は革新機構が資金の大半を出資し、パナソニック、三井物産と合計30億円規模で発足する。最終的に日本企業10社程度が出資し、運用資金を300億円規模にする。
企業から買い取って売却した利益の一部は元の企業に還元する。事業拡大を目指すベンチャー企業の創業支援も行う。休眠特許も更新料などがかかる。ファンドが買い取ることで企業負担を緩和する狙いもある。
買い取り対象は、事業改革を進めている電機メーカーが持つ携帯電話、液晶パネル、半導体関連などの特許を想定している。事業の見直しで不要になったり、単独で活用できなくなったりした休眠特許も買い取る。買い取った特許を外国企業が日本企業の特許を侵害していないか調査し、不正利用があった場合は特許使用料の請求も行う。
半導体や薄型テレビ業界では、事業から撤退する日本企業が特許を韓国や中国企業に売却し、日本企業がさらに劣勢に陥るケースもある。韓国サムスン電子製の有機ELテレビには、もともとNECが持っていた特許が使われている。
読売新聞 2013年7月25日 朝刊
今回設立されるファンドは、活用されていない日本企業の特許権を買い取り、別の日本企業に譲渡または貸し渡すことによって、日本企業が所有している休眠特許が海外に流出して産業競争力を損なうことを防止することを目的として設立されるものです。
従来から叫ばれている「休眠特許の活用」を日本企業間に限定したものと考えることができ、休眠特許の売却先を日本企業に絞り込むことによって、日本企業が所有している休眠特許の活用が従来に比べて促進されるのかは疑問です。
一方、「知財の利回り(岸宣仁 著/東洋経済新報社発行)によれば、米国においては、投資家からファンドを調達し、人間の頭脳に投資して生まれた成果を投資家に還元するというビジネスモデルを作り上げた「インテレクチュアル・ベンチャーズ」という新興企業があるようです。
この企業の具体的な事業内容は、
①インベストメント
既に権利化された特許(出願中のものを含む)を買い取り、企業などにライセンスしてロイヤリティーを得る
②ファクトリー
社内のスタッフだけでなく、社外の発明家と共に協働して発明を想像し、特許出願して権利化を目指す
③ディベロップメント
大学、研究機関、企業の研究者とパートナー契約を結び、彼らの発明や特許の市場性を評価すると共に、社内の専門家が特許出願の代行をしたり、商品化戦略のアイディアを練ったりする
という3つのプログラムで構成されています。また、同社の社長は、企業に投資するマーケット、即ち、企業が発行する株式を売買する「株式市場」と同じように、「知」に投資するマーケット、即ち、「特許(発明)」を売買する「特許(発明)市場」が出来上がる可能性があることを示唆しています。
いずれにせよ、これからは、「知」というものをいかにビジネスに結びつけていくのかが重要であることは間違いないようです。
弁理士 西村陽一
ネーミング(14)
2013.07.31 10:00
これまでネーミングについてお話してきましたが、今回で最終回となります。
商標法第3条第1項第3号(商品の品質や効能を表示しただけの記述商標)の不登録要件を回避する手法については、第6回から前回までの「ネーミングの案出手法」において、折に触れて説明してきましたが、今回は、そこでは取り上げなかったその他の3条1項3号回避に成功したネーミングの事例を列挙しておきます。9)その他の3条1項3号回避に成功したネーミングの事例
■わが家の/おいしい牛乳(牛乳)
→「おいしい牛乳」だけなら品質表示
■ホッとアイマスク(アイマスク)
→★「ホットアイマスク」なら品質表示
■ナイシトール(薬剤ほか) 効能
■養潤液(化粧品ほか) 用途・効能
■消臭力(芳香剤ほか) 用途・効能
→★「力」には「リキ」のふりがなで登録
■のどぬーる(薬剤ほか) 使用方法
■おくだけ(芳香剤) 使用方法
■メガシャキ/MEGASHAKI(加工食品ほか) 効能(目がしゃっきり)
■YOUKI食べるラー油(ラー油、調味料)
→★社名を併記して普通名称化した語を登録全14回にわたってネーミングについてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
是非、これを参考にしていただき、商品やサービスが継続的に売れる「よいネーミング」を開発していただければ幸いです。
また、商品やサービスのネーミングは、ビジネス上非常に重要な役割を果たしますので、商標登録を行い、他人の模倣を阻止した状態でご使用いただければと思います。