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知的財産契約(6)

2013.11.13 10:00

今回は、ライセンス契約と独占禁止法とのについて説明します。

ライセンス契約を結ぶ場合、その契約内容は、民法における契約自由の原則に基づいていかなるように定めてもよいのが基本ですが、市場における競争秩序に悪影響を及ぼす契約内容は、独占禁止法により違法として取り締まられることになります。従いまして、独占禁止法が禁止している「私的独占」、「不当な取引制限」及び「不公正な取引方法」に該当しないような内容にしておく必要があります。

独禁法21条は、「著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為については適用しない」と規定していますが、如何なる行為が独禁法上の「私的独占」、「不当な取引制限」、「不公正な取引方法」に該当するのかは一義的に確定することができませんので、公正取引委員会が平成19年9月28日に公表し、平成22年1月1日に改定された「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」をお読みいただくことをお勧めいたします。

この指針は、知的財産のうち技術に関するものを対象とし、技術の利用に係る制限行為に対する独占禁止法の適用に関する考え方を包括的に明らかにしたものですので、特許等の技術的な知的財産権に関するライセンス契約を結ぶ際に有用であると考えます。

この指針では、以下に示すように、私的独占及び不当な取引制限の観点からの考え方と、不公正な取引方法の観点からの考え方が示されており、技術の利用に関し制限を課す行為及びその他の制限を課す行為についてある程度具体的に示されています。

A.私的独占及び不当な取引制限の観点からの考え方
1.私的独占の観点からの検討
(1)技術を利用させないようにする行為
(2)技術の利用できる範囲を制限する行為
(3)技術の利用に条件を付す行為
2.不当な取引制限の観点からの検討
(1)パテントプール
(2)マルティプルライセンス
(3)クロスライセンス
B.不公正な取引方法の観点からの考え方
1.基本的な考え方
2.技術を利用させないようにする行為
3.技術の利用範囲を制限する行為
(1)権利の一部の許諾
ア 区分許諾(白色条項)
イ 技術の利用期間の制限(白色条項)
ウ 技術の利用分野の制限(白色条項)
(2)製造に係る制限
ア 製造できる地域の制限(白色条項)
イ 製造数量の制限又は製造における技術の使用回数の制限(白色条項)
(3)輸出に係る制限(白色条項)
(4)サブライセンス(白色条項)
4.技術の利用に関し制限を課す行為
(1)原材料・部品に係る制限(灰色条項)
(2)販売に係る制限(灰色条項)
(3)販売価格・再販売価格の制限(黒色条項)
(4)競争品の製造・販売又は競争者との取引の制限(灰色条項)
(5)最善実施努力義務(白色条項)
(6)ノウハウの秘密保持義務(白色条項)
(7)不争義務(灰色条項)
5.その他の制限を課す行為
(1)一方的解除条件(灰色条項)
(2)技術の利用を無関係なライセンス料の設定(灰色条項)
(3)権利消滅後の制限(灰色条項)
(4)一括ライセンス(灰色条項)
(5)技術への機能追加(灰色条項)
(6)非係争義務(灰色条項)
(7)研究開発活動の制限(黒色条項)
(8)改良技術の譲渡義務・独占的ライセンス義務(黒色条項)
(9)改良技術の非独占的ライセンス義務(白色条項)
(10)知徳知識、経験の報告義務

※黒色条項:原則として不公正な取引方法に該当する制限行為
※灰色条項:公正競争阻害性があれば不公正な取引方法に該当する制限行為
※白色条項:原則として不公正な取引方法に該当しない制限行為

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