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第3回 小売役務商標について

2012.12.12 09:00

小売役務商標とは、小売業者等がその業務に係る小売・卸売に使用する商標のことをいいます。

小売業者及び卸売業者(以下、「小売業者等」といいます。)は、店舗設計や品揃え、商品展示、接客サービス、カタログを通じた商品の選択の工夫等といった、顧客に対するサービス活動を行っていますが、これらのサービス活動は、商品を販売するための付随的なサービスであること、また、対価の支払いが、販売する商品の価格に転嫁して間接的に支払われ、当該サービスに対して直接的な対価の支払いが行われていないことから、従来の商標法では、「役務」には該当しないとされていました。

そのため、従来の商標法では、小売業者等がサービス活動に使用する商標は、「役務」に係る商標としては保護されていませんでした。

ただし、小売業者等が商品について使用をする商標は、「業として商品を(中略)譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法第2条第1 項第1号)にも該当しますから、小売業者等が取扱商品に商標を貼付したり、チラシに販売商品と共に商標を表示したりする場合は、その商標について自らが販売する商品の商標権を取得して、商品に係る商標としての保護を受けることは可能でした。

しかしながら、例えば、店内のショッピングカートに社標が表示してあったり、接客サービスをする店員の制帽・制服・名札に社標を付し、その制服等を着用してサービスを提供することは、商品との具体的な関連性を見いだせないことから、商品に係る商標としての商標権では保護されておらず、改正前の商標法の下では、小売業等の商標の保護には限界がありました。

また、多くの種類の商品を取り扱う小売業者等が商標登録する場合、小売業者等はその多くの取扱商品を指定して商標登録しなければなりませんが、そのためには、多数の区分に分類された商品を指定して出願しなければならず、区分の数に応じて課されている出願手数料や登録料、その後の維持費用等が大きな負担となっていました。

そこで、商標法が一部改正され、平成19年4月1日から、小売業、卸売業の方々が使用するマークを小売役務商標として保護する制度がスタートしました。

具体的には、以下に掲げるような標章について、小売役務商標として保護を受けることができます。
1. 店舗内の販売場所の案内板(各階の売り場の案内板)に付する標章
2. 店内で提供されるショッピングカート・買い物かごに付する標章
3. 陳列棚に付する標章
4. ショーケースに付する標章
5. 接客する店員の制服・制帽・名札に付する標章
6. 試着室に付する標章
7. その取扱商品や包装紙、買い物袋に付する標章
8.顧客が、手にとって実際に商品の確認を行うために店頭に展示された商品見本に付
する標章
9.会計用カウンターに設置される、商品の会計用のレジスターに付する標章
10.商品の販売のために商品の品揃え、商品説明などを行うインターネットサイト上に
表示する標章
11.小売店の店舗屋上に設置した看板に付する標章
12. 電車内の吊り広告に付する標章
13. 新聞広告に付する標章
14. 新聞の折り込みチラシに付する標章
15. 店舗内で展示、頒布する商品カタログ・価格表に付する標章
16. インターネットサイト上で取扱商品の広告を表示する際に表示する標章

また、小売等役務は、その取扱商品が多種類の商品分野に及ぶ場合でも、ニース協定の国際分類によれば、第35類という一つの区分に属する役務であることから、小売業者等が自己の商標を小売等役務に係る商標として商標登録する場合には、改正前のように多数の区分に出願する必要がなく、第35類という一つの区分に出願すればよいので、取扱商品の範囲に応じて区分の数が多くなって出願手数料や登録料等の負担が大きくなるということはありません。

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